皆さんこんにちは、デジタルツール・生成AI活用アドバイザーの津田淳(中小企業診断士)です。
今朝(2024.12.6)からChatGPT o1がリリースされましたね。このo1というモデルは高い推論能力が特徴です。
推論とは「ある事実をもとにして、未知の事柄をおしはかり論じること」だそうです。
生成AIは、従来のツールとは異なり、高度な推論力を活用して、複雑な課題にも迅速かつ効率的に対応できます。本記事では、ChatGPTの最新モデルのo1を使って、どのように経営の意思決定を助けるのか解き明かしたいと思います。
早速、下記のプロンプトを作りました。
どのような解答を生成してくれるか見てみましょう。そして、この解答に対して対話をしながらより深い洞察を得てみたいと思います。
それではどうぞ、ご覧ください。
1.プロンプト作成
経営コンサルタントのあなたは、以下の状況に直面している製造業A社(従業員50名)のアドバイザーです。複数の選択肢から、最適な経営判断を導き出してください。 (1) 現状分析 ・A社は特殊な工業用部品を製造 ・売上の80%を大手メーカーB社への供給が占める ・残り20%は国内の中小企業への販売 ・直近3年間の営業利益率は8%で安定 ・従業員の平均年齢は45歳 (2) 市場環境の変化 ・B社が2年後にASEAN地域への生産拠点移転を検討中 ・国内の競合他社2社が新技術の特許を取得 ・人手不足により、熟練工の採用が困難 ・原材料費が前年比で15%上昇 状況の変化やイベントの発生 (1) 予期せぬ出来事として、以下が同時に発生 ・B社から、取引継続の条件として30%の単価引き下げを要請 ・技術革新により、製造工程の50%自動化が可能に ・ASEAN地域の新興企業から業務提携の打診 ・政府から事業再構築補助金の採択通知 解答すべき設問 (1) A社が取るべき最適な意思決定の組み合わせを示してください。 (2) その選択による5年後の想定される結果を予測してください。 (3) 予測の中で最もリスクの高い要素を特定してください。
2.ChatGPTとの対話
上記について質問すると下記の解答がありました。
全文掲載すると長いので省略します。
<概要>
・A社はB社からの取引条件悪化を受け入れつつ、生産工程の自動化によるコスト削減と補助金を活用した新事業再編により収益基盤を強化する。
・同時にASEAN新興企業との提携を通じて海外市場を開拓し、顧客ポートフォリオを分散させる。
・この戦略により、5年後には対B社依存が低下し、新市場での売上拡大が期待できるが、新規市場での競合や提携先の不確実性が最大のリスクとなる。
【要点のまとめ】
•B社からの値下げ要求は自動化で吸収し利益維持
•政府補助金で事業再構築し、新技術対応・製品拡充
•ASEAN企業との提携で市場分散を図り、B社依存を軽減
•5年後は収益の多様化・安定化が可能
•最大リスクは海外提携先との関係性や現地市場での不確定要因
解答を読むと、「取引条件悪化を受け入れつつ」としているのが、少し気になりました。そこで下記の質問をしてみます。
30%の値下げを受け入れるのは難しいのでは?
すると下記のような解答をしてくれました。
つまり、B社に依存しすぎているので結局受け入れざるを得ないし、人手不足であり、原材料費高騰のためコスト削減と自動化をやるしかない。そして補助金の採択とASEAN展開のチャンスがあるのでこのチャンスを活かそう。ただしリスク低減策はありますよ。ということのようです。
いかがでしょうか。かなり賢いと思います。
<概要>
30%の値下げ要求を受け入れることは確かに大きな負担となり、即時には難しい判断である。しかし、自動化を前提とした生産性向上や補助金を活用した新規投資、海外市場開拓による収益源分散など中長期的な戦略を組み合わせることで、その負担を相対的に軽減し、最終的に収益構造の再設計を図ることが可能となる。
1.値下げ要求受け入れの困難性の理由
(1) 直接的な利益率悪化
- 30%の値下げは、短期的にはA社の利益を大きく圧迫する
- 原材料費高騰などのコスト増を考慮すると、現行の生産体制での利幅確保は困難
(2) 対B社依存の高さ
- 売上の8割がB社向けであるため、交渉力はB社側に強く偏っている
- 値下げ要求拒否は、A社側に取引終了のリスクをもたらす
2.それでも受け入れを検討すべき要素
(1) 自動化投資による生産性向上
- 生産工程の50%自動化は人件費削減と生産効率向上を可能にする
- これにより、値下げ後でも一定の営業利益を確保できる余地が生まれる
(2) 補助金活用による事業再編
- 政府補助金を用いて新技術・新製品開発や設備更新を行うことで、コスト構造を抜本的に改善
- 新規製品や改良製品の投入で付加価値を高め、収益源を多様化
(3) 海外提携による取引先分散
- ASEAN企業との提携により海外販路を拡大し、B社依存を緩和
- 将来的にB社以外からの売上増が見込めれば、30%値下げを受けても長期的な収益安定に繋げられる
3.リスク軽減策
(1) 段階的な値下げへの移行交渉
- 直ちに30%の値下げを受け入れるのではなく、段階的なディスカウントを提案
- 自動化投資の進捗や新技術開発成果に合わせ、値下げ率を徐々に増やしていく交渉余地を探る
(2) 既存顧客との関係強化、他社への営業活動
- 国内中小企業顧客との関係強化で小口ながらも堅実な収益源を確保
- 新規顧客開拓を地道に行い、需要ポートフォリオの改善を図る
【要点のまとめ】
•30%値下げは即時には難しく、利益圧迫要因である。
•しかし、自動化による効率化、補助金による革新投資、海外提携など長期的戦略と組み合わせることで値下げ後の収益回復を目指せる。
•段階的な値下げ交渉や国内外での顧客分散を行い、対B社依存からの脱却を図ることで、最終的な持続的成長を実現可能。
3.思考プロセスの確認
そして次に、どのように思考してこの解答を導いたのかを聞いてみました。
解答を生成するのにどのような思考プロセスを経て結論を導いたのですか?例えばSWOTやPEST、3C分析などしていますか?
思考プロセスの全体像
(1) 課題の理解
- まず与えられた状況を整理するとA社は特殊工業部品の製造でB社に大きく依存し、値下げ要求を受けている。また、海外進出や自動化、補助金活用の余地がある。
- 売上構造やコスト上昇、熟練工不足、国内競合の特許取得など、内外のプレッシャーを俯瞰し、問題点と機会を洗い出す。
(2) 分析フレームワーク適用
- 3C分析(Customer, Company, Competitor):
(ア) Customer(顧客):B社への高い依存度と、海外顧客の獲得機会
(イ) Company(自社):生産能力や自動化余地、補助金活用による強化策
(ウ) Competitor(競合):国内競合他社が特許取得で優位性確保、海外進出企業の台頭
B社への高依存による交渉力低下、競合優位強化への対応必要、自社資源を自動化・新規開発へ振り向け可能
- SWOT分析:
(ア) Strength(強み):特殊工業部品製造の実績、既存顧客B社との関係
(イ) Weakness(弱み):B社依存度の高さ、人材不足、コスト上昇対応力の弱さ
(ウ) Opportunity(機会):海外提携による新市場開拓、政府補助金による事業再構築支援
(エ) Threat(脅威):B社からの値下げ要求、競合の特許取得による差別化、原材料費上昇
強み(既存顧客関係)を基盤に、海外提携・補助金でW克服・O活用、Tに対する戦略的な対応が必須
- PEST分析:
(ア) Political(政治・政策):事業再構築補助金など公的支援制度の存在
(イ) Economic(経済):原材料費上昇、ASEAN地域成長市場の台頭
(ウ) Social(社会):熟練工不足による労働力確保問題
(エ) Technological(技術):自動化技術進展、新技術特許取得による競争力変化
外部環境は補助金など好機もある一方、コスト上昇・人材難・技術競争激化。政策支援や新技術で対応可能
- ポーターの5フォース分析(簡易適用):
(ア) 供給業者の交渉力:原材料高騰で上昇
(イ) 顧客の交渉力:B社依存度が高く、顧客交渉力が強い
(ウ) 競合他社間の敵対度:特許取得でライバル優位性強化
(エ) 新規参入者の脅威:ASEAN新興企業との提携で機会だが同時に脅威にもなり得る
(オ) 代替品の脅威:新技術開発で代替品が増える可能性
B社・供給元両面から圧力増大。新規参入・代替技術への対処が不可欠。自社価値向上と顧客多様化が鍵
各フレームワークから得られた示唆
(1) B社依存度の高さが最大の弱点で、顧客ポートフォリオ改善が急務
(2) 自動化による生産性向上で値下げ要求や人件費問題をカバー可能
(3) 補助金を活用して新製品開発や新市場進出への投資を行い、中長期的に収益基盤を多様化
(4) ASEAN新興企業との提携は市場多角化のチャンスであり、B社依存から脱却する手段となる
総合的な結論形成へのプロセス
(1) 各分析結果を踏まえ、短期~中長期の時間軸で戦略オプションを洗い出す
- 短期:B社との取引維持に伴う値下げ交渉と自動化への迅速投資
- 中期:補助金活用による設備刷新、新技術開発、ブランド強化
- 長期:ASEAN市場開拓で顧客多様化、リスク分散
(2) オプションごとのリスクとリターンを評価
- 自動化:投資コスト増だが中長期的なコスト削減効果
補助金活用:新技術開発で競争優位性獲得
海外提携:不確実性はあるが、新たな市場と顧客獲得による安定性向上
経営への示唆
(1) 値下げ要求を安易に拒否せず、将来の生産性向上と市場多角化で吸収可能な戦略を追求
(2) 内外環境を客観的に捉えるフレームワークで、「一見不利な要求」を「改善のきっかけ」に転換
(3) リスクを分散しながら、環境変化に適応する中長期的視点が重要
ということです。最後に、この解答ではB社と共に海外に生産拠点を構築するという方向性の検討がないようなので、戦略オプションを検討してもらいました。
<戦略オプション比較表>
<戦略策定上の考慮点>
(1) 自社の強み・経営資源との整合性
- 技術力・生産力・組織体制はどの方向性にも対応できるか
- 人材や資金、時間的リソースはどれに優先投入すべきか
(2) 外部環境の見極め
- B社の海外進出計画がどの程度確実か、不確実性が高いなら顧客多様化を重視
- ASEAN市場成長性や他地域市場の有望性を客観的データで評価
(3) リスク分散と中長期ビジョン
- 一方向への集中はリスクを増やすため、計画的なポートフォリオマネジメントが必要
- 5~10年先を見据え、変動する国際環境で生存・成長するための柔軟戦略構築
ということで終了です。これらの対話は数分で完了しました。
4.おわりに
今回の推論プロンプトを通じて以下の3点を感じました。
(1) 推論させるときは精魂込めて条件や指示だらけのプロンプトを書くよりも、複数回に分けて対話していき、最後にまとめる方が豊かな回答からより深い洞察を得られる。
(2)どのように考えたのかを説明してもらうと理解しやすいし、決めつけている事や検討が不足していそうなことなどにも気がつける。
(3)自社の状況(事実)をしっかりと整理して伝えることでよりリアリティある回答が得られる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。それでは今日はこの辺で失礼します。
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