皆様こんにちは。千葉県松戸市の中小企業診断士の津田淳です。

私は幸運なことに人生の中で海外(東南アジア特にタイ)に関わる仕事をする経験がありました。

今回はタイでこれから仕事をする方、タイへのビジネス展開を検討する方に向けて私の学びをお伝えしようと思います。

まず、結論。

「とにかく現地の人を知ることが大切だという事です。」

最初は知り合いもいないわけですから現地の関係者やガイドさんなどとコミュニケーションすることから始めて、あとは現地に住む日本人でしょうか。お店の店員さんとのちょっとしたコミュニケーションからも気づきを得られます。

あとは観察です。

「人」を良く理解して相手を尊敬し尊重することで気がつくことがあります。

「人」の理解をさらに深堀りするためには、日本と日本人となぜ違うのかを考える事も大切です。

ただ、自分の経験で考えるだけではなく、タイの社会的背景、価値観の違い、世代による違い、地理的状況や歴史的、民族的な要素も踏まえ、なぜこのような行動になるのか、判断になるのかなどを考えてみることが重要です。自分達の常識だけで判断すると理解できない事も多々あるからです。

こうした事を広く学ぶことで冷静に人を判断できるようになります。

海外に展開するならば相手の国のため、人のために何に貢献できるのか、謙虚な姿勢、態度で接しましょう。その中で、現地の人々の価値観、欲求を知りたいものです。

私は赴任前に研修を受講しました。そこでは仕方がありませんが画一的な事を学びました。もちろん間違えてはいません。ある時代のある世代の人達はそうでしょう。

しかし、実際に現地で付き合いを始めてみて個人的に思うことは、同じ環境にいる状況であれば、国籍の違いよりも、世代やライフスタイルの違いのほうが差が大きいということ。逆に言うと似ている部分も、理解できる部分もたくさんあります。

例えば最初のうちはアポイントを取って訪問する際に、直前の1時間前くらいにキャンセルとなったり、あるいは笑顔で微笑んでいる裏では真逆のことを考えていたり、言っていたりするような事に直面し期待を裏切られ失望する事もありました。

または、食事に誘われて家族の写真を見せ合いながらの談笑をしたり、日本とは違う近づき方が新鮮だったりしました。

このような時、なぜこのような考え方や振る舞いをするのかを考えることで相手に合わせた接し方などができるようになってくると思います。

そしてこれらのことから仕事をするうえで色々なヒントが隠されています。それはつまり信頼関係が重要であること、それは会社のブランドや肩書きもあるでしょうが、一人の人間として信頼できるかが重要視されるという事です。

例えば良く日系企業では債権回収の問題が生じます。これは大手企業であっても抱えています。具体的にはオーナー企業が多い訳ですが、すると支払いは家族企業やなくなっては困る取引先から支払っていき、そうでなければ支払いは遅らせるという考え方があるから。これは支払方法の工夫で無くせる問題でもあるかも知れませんがオーナーとしっかり家族同様の親密な関係を築くことも重要です。長期的な関係であれば当然です。

一方でこちらが顧客の場合、仕事が完了するとすぐに先方の経理マネージャーからいつ支払うのかと、毎日のように連絡が入ってきます。相手のほうが歳上だったり階級的に上だったりすれば怒られているようで怖いといいます。こうしたタイ人部下の気持ちを理解することも大切です。

あとアポイントをキャンセルされてしまうという事については良くあるのはアポイントの取り方の問題です。

相手にとって役立つ人間です、価値ある提案を持っていきますということでアポを取らず何となくのご挨拶ですとアポイントを取る人は非常に多いです。インドネシアの場合は目的を明確化してレターを先に出さなければアポは取れませんが、タイはこれでも受けてくれることも多いです。

基本的にオーナーは大金持ちで忙しいですし自由ですから表敬訪問にはあまり付き合わないと思います。もっと重要なこと、例えば家族や宗教的なこと、またはビジネス上緊急性や重要性があれば優先する傾向があります。もしかすると相手のメンツを考え、アポ依頼は断らないでいて、直前でどうしてもみたいな考え方かもしれません。

担当者相手であれば会うことは出来ても何かの決定事項を引き出すのは難しく、最終的にはオーナーが決めていくことが多くなります。すなわち、オーナーに会わなければ時間がかかるだけでなく進まないことが多いと思います。

とはいえ、日本人との付き合いが長いタイ人ですから日本の商習慣、日本人のことに詳しい。何なら日本人と言われても違和感がないくらいの人も沢山います。

特にタイ赴任してすぐの頃、違和感があった事柄を思い出しながらあげてみたいと思います。

1 時間の考え方

渋滞も多く、雨が降り出すことも多いため、東京のように時間通りにいかないことも多いので、「マイペンライ(大丈夫、問題ない)」の精神があります。こちらもある程度余裕を持った対応が必要です。ただ基本的には時間前に並ぶとかだいぶ余裕を持って行動する姿勢はあるとも思います。人にもよるでしょうが決してルーズだという先入観を持つのではなく思いやりと配慮をすると良いと思います。お互い様です。

2 人間関係重視

契約書以上に人間関係重視。とはいえ契約書も重要。何を言っているかといえばとある日本企業と合弁したタイ企業の合弁契約書。40年前の社長同士の信頼関係で進めるといった形で有耶無耶な契約となっている部分があった。両者とも社長がなくなり奥様や息子に代替わりすると、この信頼関係が作られてこなかったため問題となった。なぜならば同社の売上の殆どはタイ子会社。なくなっては終わり。タイにおいてはビジネスパートナーとしてだけではなく、家族のように仲良く親密な関係を構築することが大切だと思います。

3 階級社会

タイ社会には強い階層意識があります。タイ人であれば名前である程度分かるそう。会社を立ち上げて最初に採用するマネージャーは、学歴や家柄、年齢も上の人を雇用しないと、人が続かないと言われています。またこうした階層を超えた自由な配置や昇進には十分注意が必要と言われます。私は部下にアポイントの連絡をお願いしていましたが、先方の担当者によるのでしょうが、「いつも連絡すると怒られてしまうので大変だ」と正直に話をしてくれました。傍らに観察をしていてもこの階層における人間関係は大変厳しそうで、従業員同士のトラブルも多いです。まぁこれは日本も似たようなものかもしれませんね。ただし外国人はこの外側なのであまりこのキツさが分かりません。いずれにしても、年齢や地位に応じた敬意を示すことが大切です。

4 対面コミュニケーション

タイ人同士ならLineですぐに連絡ができますが、電話やメールよりも会って話をしたほうが効率が良いと感じます。重要な場合は会ったほうが良いでしょう。また人懐っこい人も多いと思うので日常的に色々と話を聞いて、最近どうなどと気軽に話しかけておくのも重要です。私は仕事中心になってしまった事と日本と同様の感覚で接していて仕事以外の無駄話をしないでいたら「喋ってくれないから寂しい」と言われた経験がありその時はドキッとしました。

5 メンツ

相手のメンツを傷つけないように、笑顔でニコニコ、相手を立てます。直接的な否定も避けますし、意見を募ってもなかなかみんなの前では発言しません。色々勘違いのないようにしなければなりません。

6 家族や宗教の重視

タイは仏教国のため関連行事や慣習への理解と配慮が必要です。また家族を大事にしますので家族の通院への付き添いなどにも配慮が必要です。なんなら就業規則にもこれらに配慮した形で制度化してしまうのも良いでしょう。ある工場を経営する日本人社長が従業員が突然仕事を放りだして休んでしまう無責任だと何かの罰則が必要なのではないかと激怒していたのを思い出します。それに対し弁護士が日本とは違い家族や宗教、その他仕事よりも優先する事が多い。タイの文化を尊重しむしろそれらに頑張る従業員は会社が応援する姿勢のほう賛同の得られ長期的には良いと言っているのを聞いて、最初は社長の気持わかるなと思っていたのですが目からウロコでした。なるほどなと思ったものです。

7 臨機応変さ

タイは日本より成長が早く社会の変化も大きいので臨機応変さがあるのかなと考えました。あとは備えに対する考え方の違いです。日本は季節もはっきりしており、おコメの収穫に合わせて計画的に行動します。冬に備えて備蓄します。タイは1年に3回おコメがとれ、南国ですから果物も豊富。地震もないし津波もない冬は涼しいくらいで凍えることはありません。こうした事が背景にあるのかもしれません。あまり事前に準備するとか、何かを計画して見通しを立てる、計画通りに進めるといったことに力を入れるよりは、眼の前のことに全集中のタイプが多いと思います。

日本人とタイ人、両方を対象としたあるイベントを開催時、日本人受付とタイ人受付を設置し、同時通訳のレシーバーを渡す業務を行しました。タイ人側の受付(担当タイ人)では、参加者が受付に来てからレシーバーを箱から取り出してセットして渡す方針で、日本人受付側(担当日本人)は事前にレシーバーを箱から取り出し、セットしてすぐに渡せるように準備していました。タイ人側は事前に準備なんて不要ですと人が受付に来るまでの間はコーヒーを飲みながら談笑。日本人側はセッセとレシーバーをセットして並べて準備万端にしていました。

結果的にはどちらも受付業務に変わりはありませんでした。この光景を見ながら備えること、臨機応変さへの考え方の違いがあることを学びました。これは直前になってからバタバタと片付けるタイと、計画的にコツコツきっちり詰めていく日本と仕事の進め方の違いにも現れてきます。

8 非言語コミュニケーション

タイ人とのコミュニケーションでは、言葉以外の要素(表情、身振り、声のトーンなど)にも注意を払う必要があります。特に微笑みは重要で、様々な感情を表現する手段として使われます。インターネットで調べると13種類あるとか。私には分かりませんが他国(ベトナムなど)からタイに戻ると笑顔に癒やされると感じますが、勘違いも多かったんでしょうね。知らぬがホトケです。

9 ネットワーキング

これは日本も同じかもしれませんが人脈は重要です。販売にあたっては集客の仕組みも重要ですが、ネットワークに入り込んでセールスしていかないと相手からは来ない。またはネットワークに入り込んでいる人を探してつながる。そういう地道な活動も重要です。医療機器の販売に訪タイしていた中小企業の方がコレで成果を上げていました。基本的には誰かが同じような物を供給するでしょうし、その海外展開したい製品がなくても社会は動いている訳ですから謙虚な気持ちで相手の懐に飛び込んでいきたいものです。

それでは今回はこの辺で、機会があればマーケティングについて書いてみます。

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